担当:まるやま
マンションの大規模修繕は、建物の安全性を確保し、資産価値を長期的に保つうえで欠かせない取り組みです。
ただし、実施にあたっては工事の内容に応じて、法律に基づいた同意割合や総会における適切な決議手続きが必要になります。
正しい手続きを踏まずに工事を進めてしまうとトラブルに発展する恐れもあるため、事前に制度を正しく理解しておくことが大切です。
このページでは、大規模修繕を円滑に進めるために知っておきたい決議方法の種類や必要な同意割合、注意点について詳しく解説いたします。
管理組合の総会は、区分所有者全員で構成される、マンションの管理運営に関する最も重要な意思決定の場です。
総会には、区分所有法で年に1回以上開催が義務付けられている「通常(定期)総会」と、必要に応じて開催される「臨時総会」の2種類があります。
通常総会では、予算や決算の承認、役員の選任、大規模修繕計画の確認など、定期的かつ継続的に必要な議案が審議されます。
一方、臨時総会は、管理組合の判断や一定割合の区分所有者の請求によって開催され、突発的な課題や大規模修繕に関する重要な議案などが話し合われます。
大規模修繕を円滑に進めるためには、まず総会で区分所有者の皆さまから合意を得ることが重要です。
工事内容や影響の範囲に応じて区分所有法や管理規約に沿った手続きを丁寧に進め、区分所有全体の理解と納得を得ることが、安心して修繕を進めるための大切なステップとなります。
大規模修繕に関する議案を進める際には、総会での決議が必要になります。この決議方法には、「普通決議」と「特別決議」の2種類があり、どちらを用いるかは議題の内容によって異なります。
これらの決議方法は、区分所有法に基づいてさだめられており、管理組合はそのルールに沿って手続きを進める必要があります。ここでは、それぞれの決議方法について、わかりやすくご説明します。
マンションの建物や設備の機能を維持・回復するための修繕工事では、「普通決議」による承認が基本となります。
この場合、総会に出席している区分所有者の議決権のうち、過半数の賛成があれば可決されます。なお、ここでの「過半数」とは、総議決権数ではなく、総会に出席している議決権数に対する割合で判断されます。
普通決議の対象となる工事には、外壁の補修や屋上防水、給排水管の更新、鉄部の塗装など、資産価値の保全やマンションの機能を維持するための日常的な修繕が対象となります。
ただし、工事の内容や規模によっては、普通決議では対応できず特別決議が必要とされる場合もあるため、判断が難しい場合は、マンション管理士や建築士、修繕コンサルタントなど、適切な知識を持つ第三者に相談しましょう。
マンションの建物や共用部分に関わる重要な工事を実施する際には、通常よりも高い同意が求められる「特別決議」が必要になります。
特別決議は、区分所有法第17条などで定められており、建物や設備の機能、形状、用途に大きな変更を加える工事については、住民への影響が大きいため、慎重な判断と丁寧な合意形成が重視されています。
特別決議の対象となるのは、たとえば外壁全面の塗り替えや色の変更、バルコニーの囲い込み、エレベーターの新設といった工事が該当します。
こうした工事を進めるためには、総会において区分所有者周数および議決権数の「各4分の3以上」の賛成を得る必要があります。
住民の生活やマンション全体の資産価値に大きく関わる工事であるからこそ、管理組合は工事の内容や必要性、費用負担などについて十分に説明し、丁寧に理解を得ていくことが大切なのです。
特に、大規模修繕においては、こうした合意形成がトラブルの回避と、円滑な工事の実施につながる重要なポイントになります。
マンションの管理組合が総会を正式に開催する際には、あらかじめ所定の定足数を満たしていることが前提となります。
国土交通省が管理規約の標準モデルとして作成した標準管理規約では、例えば、総戸数50戸のマンションの場合、総会が成立するためには、議決権総数の過半数を有する区分所有者の出席が必要とされています。
「出席」には、当日の実出席だけではなく、書面による議決権行使や委任状による出席も含まれ、この定足数に達していないと、たとえ議案に賛同する意見が多くあったとしても、総会自体が成立せず決議は無効となってしまいます。
そのため、総会を適正に開催し、議案を審議・決議するためには、開催通知の送付や委任状・議決権行使書の回収といった準備を、計画的かつ丁寧に進めることが重要です。
また、定足数や決議の要件は、各マンションの管理規約によって異なる場合があるため、事前に規約を十分に確認しておく必要があります。
必要に応じて、マンション管理士や建築士、修繕コンサルタントなど、専門知識を持つ第三者に相談することで、不安を解消しながら安心して手続きを進めることができます。
エントランスホールや外廊下、エレベーター、屋上といった共用部分の修繕・改修を行う際は、区分所有法および管理規約に基づいた適切な手続きが必要です。
特に、形状や用途の変更が伴うような工事では、外見上は軽微な変更に見えても、特別決議の対象となる可能性があるため注意が必要です。
共用部分の工事は、住民の生活環境やマンション全体の資産価値に大きく影響を与えることから、計画段階から丁寧な合意形成を図り、法的な要件を満たしたうえで適切に決議を行うことが重要です。
区分所有法の第17条では、共用部分の変更について、その形状や効用に著しい影響を及ぼす場合には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成による「特別決議」が必要と定められています。
なお、区分所有者数については、管理規約により過半数とすることも可能です。それでは、実際にどのような修繕や工事が「特別決議」の対象となるのでしょうか。
具体的な例として、以下に代表的な工事内容とそれぞれに必要な決議方法を一覧でご紹介します。修繕計画の検討時の判断の目安としてご活用ください。
| 修繕工事の種類 | 修繕工事の内容 | 決議方法 |
|---|---|---|
| バリアフリー化の工事 | 階段室部分を改造したり、建物の外壁にエレベーターを外付けで新設するなどの大規模な工事 | 特別決議 |
| 階段にスロープを併設したり、手すりを追加するなど、構造に影響を及ぼさない工事 | 普通決議 | |
| 耐震修繕工事 | 柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻きつけて補強する工事 | 普通決議 |
| 小規模な構造躯体に耐震壁や筋交いなどを追加する工事 | 普通決議 | |
| 防犯化工事 | 配線を空き管や建物周囲に敷設してオートロック設備を設置するなど共用部分の加工が小さい工事 | 普通決議 |
| 防犯カメラ、防犯灯などの設置工事 | 普通決議 | |
| IT化工事 | 既存のパイプスペースを利用し、光ファイバーやケーブルを敷設する工事 | 普通決議 |
| 新たに光ファイバーやケーブルを通すために、外壁や耐力壁に一定の加工を伴い、外観を元の状態に復元する工事 | 普通決議 | |
| 計画修繕工事 | 鉄部塗装、外壁補修、屋上防水、給排水管の更新、照明や防災設備の更新、エレベーター設備の更新など | 普通決議 |
| その他の工事 | 集会室、駐車場、駐輪場の増改築など、規模が大きく加工が伴う工事 | 特別決議 |
| 窓枠、窓ガラス、玄関扉などの一斉交換工事 | 普通決議 | |
| 不要となったダストボックスや高置水槽などの撤去工事 | 普通決議 |
上記のように、工事内容や影響の大きさによって必要な決議方法は異なります。特に「特別決議」が求められる工事は、区分所有者全体への影響が大きいと判断されるため、早い段階からの合意形成が重要となります。
マンションの大規模修繕は専門的な知識や多くの調整が必要となり、管理組合だけで対応するのは容易ではありません。そのため、計画の立案から工事の実施までを円滑に進めるためには、「修繕委員会」を結成することが非常に有効です。
修繕委員会の設置は、法的に義務付けられているものではありませんが、管理組合だけでは対応が難しい場面も多いため、体制づくりの一環として前向きに検討する価値があります。
修繕委員会とは、管理組合の中から有志の組合員が選出され、修繕計画の立案や工事の実施に関する検討や調整を担う専門チームです。理事会と連携しながら、より専門的かつ事務的な観点から修繕工事を支えていく役割を担います。
委員会を設けることで工事内容や進め方の検討がしやすくなり、計画の整理や住民への説明も行き届きやすくなります。その結果、工事全体の流れが明確になり、トラブルのリスク軽減にもつながります。
修繕委員会の主な役割は以下の通りです。
・長期修繕計画と工事内容の整合性を確認し、計画を着実に進める
・工事の範囲や仕様を具体的に検討する
・設計監理方式や一括請負方式など、適切な工事公式を検討する
・施工会社やコンサルタントの選定、契約交渉を担当する
・住民説明会を企画・開催し、意見を集約・調整する
このように、修繕委員会が中心となって進めることで、住民の皆さまも安心して参加でき、納得感のある大規模修繕を実現しやすくなります。
マンションの大規模修繕では、修繕の内容に応じた決議方法や必要な賛成割合をしっかり把握し、区分所有法や管理規約に基づいて手続きを踏むことが、後々のトラブルを回避し、計画通りに工事を進めるための重要なポイントとなります。
例えば、通常の修繕工事では「普通決議」により、出席者の過半数の賛成が必要となりますが、外観や機能に大きく影響を与えるような工事では、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成を要する「特別決議」が求められます。
また、共用部分の工事においては、形状や用途の変更を伴うかどうかによって決議方法が異なるため、議案の整理や判断にも注意が必要です。
議案の判断が難しい場合には、「公益財団法人マンション管理センター」などの信頼できる第三者機関へ相談することをおすすめします。法的な根拠に基づいた助言を受けることで、誤った手続きによるトラブルを未然に防ぐことができます。
また、大規模修繕は、工事の計画から実施、完了までに数年を要することも少なくありません。
そのため、工事を円滑に進めるために、管理組合の内部に「修繕委員会」を結成するのが理想的です。修繕委員会を中心に計画や使用の検討を進めることで、住民との意見調整もスムーズに進み、安心して修繕工事に取り組む体制が整います。
ビルドアートでは、初めての大規模修繕でも安心して進めていただけるよう、これまでの豊富な実績をもとに専門スタッフが丁寧にご対応いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。