タイル外壁の劣化が進行すると、タイル自体が落下し、通行人や入居者に当たってケガを負わせてしまう危険性があります。
特に高層階のビルやマンションは被害も大きくなる可能性が高まるため、定期的にメンテナンスを行って安全性を確保することが非常に重要です。
国土交通省では、おおむね10年に1度、タイルの剥離を確認するために外壁の全面打診等を行うよう定めており、建物の所有者には調査内容を定期的に報告することが義務付けられています。
タイルの剥がれや割れ、汚れなどは美観を大きく損なう原因となります。
美観が低下すると、建物全体が老朽化して見えたり、暗い印象を与えてしまい、入居者の満足度や入居率の低下に繋がる可能性もあります。
タイルの浮きやひび割れを放置していると、タイルと下地の間に雨水が浸入し、様々なトラブルに発展してしまいます。
雨水はタイルを接着しているコンクリートやモルタルの劣化を早める原因となり、劣化が進行すると接着力が低下し、最終的にタイルの剥がれたり、落下する恐れがあります。
さらに、外壁から浸入した雨水によって雨漏りが発生し、躯体の腐食やシロアリ・カビの発生、耐震性の低下などを引き起こしてしまいます。漏りは建物の資産価値を下げる大きな要因となるため、しっかりとメンテナンスを実施し、雨漏りを未然に防ぐことが大切です。
タイルの材質は、主に次の3種類に分類され、それぞれ吸水率が異なります。吸水率が低いほど雨水や汚れを吸い込みにくいです。
一般的に外壁に使用する場合は、吸水率の低い「磁器質タイル」や「せっ器質タイル」を採用するケースが多いです。
磁器質タイルは吸水率が3%以下と低く、非常に頑丈で耐久性・耐摩擦性に優れているのが特徴です。雨水や汚れも付着しにくく、変色も起こりにくいので、外壁に最も適したタイルと言えます。
外壁をはじめ、水回りや床など様々な場所に用いられています。
せっ器質タイルの吸水率が10%以下です。磁器質タイルよりはわずかに吸水率が高いですが、比較的優れた耐久性を持っています。
また、磁器質タイルほどの硬さが無いため、表面の加工がしやすく、デザインの自由度も高いのがメリットとして挙げられます。
陶器質タイルは吸水率が50%以下と高いため、上記の「磁器質タイル」「せっ器質タイル」に比べると耐久性に劣りますが、変色しにくい特徴があります。
表面に釉薬を施したタイプなどデザインのバリエーションも多く、主に内装に用いることが多い種類です。
タイル自体の耐用年数は20~30年程とされており、メンテナンスフリーをイメージする方もいるかと思いますが、実際は10年ごとを目安に修理・補修が必要です。
理由は、下地のコンクリートやモルタル、シーリング部分に関しては10年程で劣化がみられるようになるからです。下地やシーリングの劣化を放置していると、雨漏りの発生やタイルの剥離・落下に繋がります。
また前述したように、国土交通省により10年に1度の打診調査が義務付けられているため、定期的な点検は欠かせません。
タイルの浮きは、タイル外壁の下地であるコンクリートやモルタルの接着力が低下することによって起こります。接着力が低下する原因は、紫外線や寒暖差などによる経年劣化や、雨水の浸入による劣化進行が挙げられます。
浮きを放置していると剥がれ落ちてしまう可能性があるため、早めの補修が必要となります。
タイルの割れ・欠損は、コンクリートやモルタルの接着力が低下したり、地震や車の振動などによる建物の揺れによって発生します。
割れや欠損は、外壁内部に雨水が浸入するリスクが高い状態のため、早急な対処が必要です。また、タイルの浮きと同じく、タイルが剥がれて落下する危険性もあります。
タイル同士の隙間や窓サッシ周りには、シーリングと呼ばれるゴム状の部材が充填されています。建物は構造上、異なる建材同士の間にどうしても隙間ができてしまうため、シーリングはその隙間を埋めて雨水の浸入を防ぐ役割を担っています。
シーリングは紫外線の影響によって剥がれやひび割れを引き起こすため、定期的な補修が必要です。補修方法は「打ち替え」と「打ち増し」の2通りあり、施工場所や劣化状態に応じて選択します。
打ち替えとは、既存のシーリングを撤去して、新しいシーリング材を打ち直す方法です。費用は1mあたり800円~1,200円が相場です。
打ち増しは、既存のシーリングを撤去せずに、上から新しいシーリング材を追加していく方法です。費用は1mあたり500円~900円が相場です。
タイルの剥離や欠損が起きている場合は、部分的な張り替えを行います。劣化しているタイルを剥がし、下地にモルタルを施工して新しいタイルを固定します。
注意点として、使用中のタイルと同じ製品が用意できないケースもあるため、その際は似ているタイルを使うことになります。できるだけ色や厚みが近いものに交換はしますが、場合によっては張り替えた部分が浮いて見えてしまう可能性があります。
タイルの張り替えにかかる費用は、1㎡あたり1万円~3万円程が相場です。
タイルが浮いている場合は、アンカーピンニング工法を行います。
アンカーピンニング工法とは、タイルや目地部分にドリルで穴を開け、その穴からタイルと下地の間にエポキシ樹脂を注入して隙間を埋め、最後にアンカーピンでタイルを固定する工法のことです。
費用は、1箇所あたり500円~1,000円程度が相場となります。既存のタイルを剥がさずに補修できるので、コストを抑えることが可能です。
タイルは素材自体が耐久性・防水性に優れているため、基本的に塗装は不要です。
ですが、つや出しを目的としてクリヤー塗装を行うケースもあります。クリヤー塗装では透明な塗料を使うため、既存のデザインを隠すことなく、光沢感のある外壁に仕上げることが可能です。
ただし、一度塗装をすると元の状態に戻すことはできません。さらに、塗料の耐用年数を迎えると再塗装しなければならず、本来は必要の無い手間と費用もかかってしまいます。
タイルの塗装はデメリットも大きいと言えるため、しっかりと業者と相談したうえで慎重に判断することが大切です。
塗装にかかる費用は使用する塗料の種類によっても異なりますが、1㎡あたり2,000円~4,000円程が相場となります。
タイル外壁のメンテナンスを行う一番の目的は、安全性を確保することです。メンテナンスを怠ると、タイルが落下して通行人や入居者にケガを負わせてしまう恐れがあります。
また、周囲の建物や車などにタイルが当たって思わぬトラブルを引き起こす可能性もあるため、大きな問題に発展する前に修理・補修を行うことが大切です。
タイル外壁は約10年を目安に点検・メンテナンスが必要となります。所有物件でタイルを使用されており、タイルの浮きやシーリング劣化などが気になるという場合は、ぜひ弊社までご相談ください。