担当:まるやま
大規模修繕の見積書は数百万円から数千万円に及びます。そのため、適正な見積書なのかを見極めることがとても重要です。
「総額」と「主要な単価」の比較だけで発注先を決めてしまうと、後に「追加費用の発生」や「数年での塗装剥離」などといったトラブルに見舞われてしまいます。
今回は大規模修繕の見積書を比較・検討するときのチェックポイントを解説いたします。ぜひ参考にしてみてください。
「外壁塗装:一式」という表記が論外なのは言うまでもありませんが、見積書に数字が並んでいても「数量の根拠」が不明な見積書は危険です。
「延べ床面積×係数」の概算ではなく、窓やドアなどの開口部を差し引いた正確な塗装面積が算出されているかを確認しましょう。
面積の算出方法によって、同じ建物でも見積もりに大きな差が生じます。
【正しい塗装面積の計算式】
外壁面積 = 外周の長さ × 高さ
実塗装面積 = 外壁面積 - 開口部(窓・ドア等)の合計面積
実測と図面計算どちらも正確な面積算出が可能です。
ただし、図面の場合、増築・改修による変更等で実際の建物とは状況が変わっているケースもあります。
特に神奈川県の傾斜地・変形地に建てられている物件は図面と実寸が異なることもあるため、業者に算出方法について確認しておくといいでしょう。
ここで返答を曖昧にする業者は、面積を正確に測らずに適当に算出していたり、工事中盤で「面積が足りなかった」と追加費用を求めてくる可能性があるため注意が必要です。
塗料に関する情報も必ずチェックしましょう。
どのような塗料を、どのくらい使うのかわからなければ、適正な見積書なのかを判断することはできません。
また、塗料の情報を明確にしない業者は、信頼性に欠けます。
単に「フッ素塗料」「シリコン塗料」という分類だけでなく、下塗り・中塗り・上塗りそれぞれの塗料メーカー・製品名が明記されているかを確認しましょう。
どの製品が使われているのかわからないければ、「既存の外壁材に適用する塗料なのか」「性能や耐用年数」など塗料に関する情報が得られません。
製品名を記載していない場合、外壁材との相性が悪く数年で剥がれてしまったり、実際には性能や耐久性の低い塗料を使用する悪徳業者だったというようなトラブルに発展する恐れがあります。
「使用予定缶数」の提示も重要なポイントです。製品によって「塗布量(1㎡あたり何kg使用するか)」が定められており、塗装面積と規定塗布量がわかれば、必要な缶数を計算できます。
見積書に「使用予定缶数」が記載されている、または質問してきちんと答えられる業者は、希釈(薄めすぎ)による手抜きのリスクが低いと言えます。
塗装面積や使用する塗料の量が不明確の場合、規定の量で塗装をしてもらえず、早期の剥離など施工不良を引き起こす可能性が高まります。
| 工程 | 良い記載例 製品名・数量明記 | 危険な記載例 製品名・数量不明 |
|---|---|---|
| 下塗り (プライマー/シーラー) |
「○○○社 エポキシシーラー ××型 ○○㎡/缶」 | 「下塗り一式」のみ |
| 中塗り | 「○○○社 フッ素系中塗り材 ××型 ○缶使用予定」 | 「中塗り」のみ記載 |
| 上塗り | 「○○○社 無機フッ素系 ××型 耐候年数○○年 ○○㎡」 | 「フッ素塗料 上塗り ×㎡」のみ |
大規模修繕でトラブルが起きやすいのが、足場を組んだ後にしか見えない「タイルの浮き」や「コンクリートの爆裂」の補修費用です。
実際に足場を組まないと確認できない劣化は存在するため、補修箇所が増えること自体はあり得るケースです。
注意が必要なのは、追加の補修箇所に関する説明や記載が曖昧な見積書です。適切な記載がされていない場合は、工事が始まってから高額な補修費用を請求してくる可能性があります。
タイル張り替えやエポキシ樹脂注入の単価が見積書に記載されているか、当初想定の何%を超えたら追加費用が発生するか等、取り決めが明確にされている見積書であれば信頼性が高いと言えます。
| 良い記載例 | 危険な記載例 |
|---|---|
| ・タイル張り替え:○○○○円/枚 ・エポキシ樹脂注入:○○○円/箇所 ・アンカーピン固定:○○○円/本 ・「想定○○個所を超えた場合は上記単価で精算」と明記 ・着工前に想定数量・想定費用の提示がある |
・「下地補修 一式 ○○万円」のみ ・単価の記載がなく個数も不明 ・「実際の状況を見て追加見積りします」だけで、ルールの取り決めなし ・足場設置後に「追加で○○万円かかります」と口頭のみで請求 |
間接工事費とは、工事には直接かかわらない部分の諸経費を指します。
あまり意識して見る部分ではなく、詳細もわかりにくいかと思いますが、諸経費までしっかりとチェックしておくことが大切です。
間接工事費の分類・比率についてご説明いたします。
間接工事費は次の3つに分けられます。
【共通仮設費】
現場に作る事務所や休憩スペース、仮設トイレ、椅子や机など工事終了後に撤去される仮設物にかかる費用
【現場管理費】
現場管理者(職人以外)の給与や交通費、食事代、備品など現場を管理するために必要な費用
【一般管理費】
従業員の給与、会社で使う事務用品や通信費、事務所の家賃など会社の経営維持に必要な費用
「工事に関係ない費用じゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが、会社として存続させるためには、しっかりと費用を確保しなければなりません。
施工業者によって間接工事費にかかる費用は異なりますが、一般的に全体の10~15%程と言われています。例えば、1000万円の工事の場合は。100万円~150万円程になるということです。
諸経費が高すぎる見積書が危険なのはもちろんのことですが、反対に安すぎる場合にも注意が必要です。
そのような見積書は、本来は必要な手間が省かれていたり、現場管理が不足している等の理由がある可能性が考えられます。内訳を確認し、適正な費用なのかを見極めることが重要です。
外壁の目地やサッシ周りなど、建材同士の隙間に施されているシーリングも定期的なメンテナンスが不可欠です。
補修方法は「打ち替え」と「打ち増し」2種類の補修方法があり、既存シーリングの状態や施工場所によって工法を決めます。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
| 比較項目 | 打ち替え(撤去・打ち直し) | 打ち増し(増し打ち) |
|---|---|---|
| 施工内容 | 古いシーリングをすべて撤去してから新しいシーリング材を充填する | 古いシーリングの上から新しいシーリング材を重ねて充填する |
| メリット | 新しいシーリング材になるため耐久性や性能を復活させられる | 既存シーリングが活きていればコストを抑えて補修できる |
| デメリット | 既存のシーリングの撤去費用がかかるため、打ち増しに比べてコストがかかる | 内側の古いシーリングは傷んだままなので、内側から再びひび割れるリスクがある。 |
| 適した場所 | サイディング・ALC・タイルの目地部分(劣化が進んでいる箇所) | サッシ周りなどカッターを入れると防水紙を傷つける恐れがある箇所(構造上の理由がある場合のみ) |
見積書を確認する際は、「打ち替え」と「打ち増し」どちらの記載がされているかをチェックしましょう。工法や製品名などが書かれておらず、「シーリング工事 一式」等と記載されている場合は要注意です。
また、打ち増しの場合は「なぜ打ち替えではなく、打ち増しなのか」を聞いてみることも大切です。
増し打ちを勧める業者が必ずしも悪徳業者ではありませんが、本来打ち替えが必要な部分を増し打ちで補修すると、早期に剥がれ・ひび割れが発生します。
「既存シーリングが健全である」「厚みが十分に確保できる」など、具体的な根拠を提示できるかをチェックするようにしましょう。
ただ、打ち増しによる補修が適した部位もあります。
例えば、サッシ周りのシーリングはカッターで撤去する際に防水紙を傷つけるリスクがあるため、増し打ちが選ばれることがあります。この場合は構造上の理由を説明できる業者かどうかを確認してみてください。
5つのポイントを踏まえ、複数社の見積書を比較する際の最終チェックリストです。
開口部を差し引いた正確な面積が記載され、実測か図面から算出した数値であるかを確認します。「延べ床面積×係数」のみの概算では不十分です
「フッ素塗料」「シリコン塗料」という分類だけでなく、下塗り・中塗り・上塗りそれぞれのメーカー・製品名が明記されているかを確認します。
使用缶数も確認することで、手抜き工事のリスクも抑えられます。
「下地補修 一式」という表記には注意が必要です。補修内容やそれぞれの単価と、追加発生時の精算ルールを契約前に確認してください。
諸経費の内訳を確認し、金額が高すぎる・安すぎる見積書は理由を業者に確認してみてください。悪徳業者の場合、高額請求や手抜き工事につながる可能性があります。
「シーリング工事 一式」ではなく、打ち替えと打ち増しの記載があるか、それぞれの施工箇所・面積・単価が記載されているかを確認します。打ち増しが選ばれる箇所は、その理由を聞いてみましょう。
大規模修繕を成功させるためには、契約前の見積書チェックが重要です。複数の見積書を比較し、「なぜこんなに差があるのか?」と疑問に思った場合は、必ず業者に内訳を確認しましょう。
簡易的な表記の見積書や、説明を求めても曖昧な返答でごまかすような業者は、信頼性に欠けるため要注意です。
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