担当:まるやま
資金不足は決して珍しいことではありません。それどころか多くのオーナー様が悩まれている問題と言えるでしょう。
今回は修繕積立金が足りない場合の対処法についてご紹介いたします。
適切な修繕時期を逃すほどコストも跳ね上がりますので、資金不足だからといって諦めずに、利用できる制度やコストを抑えられる部分がないかを確認してみるようにしましょう。
「大規模修繕の見積もりを取ったけど積立金が全く足りなかった」「このままでは必要な工事ができないのは?」
そんな状況に直面しているオーナー様も決して少なくないでしょう。近年の資材・人件費の高騰もあり、当初の長期修繕計画通りに資金が貯まっているケースの方が稀かもしれません。
重要なのは「安かろう悪かろう」な工事に走るのでも、修繕を先送りにするのでもなく、「お金をつくる」と「支出を絞る」という点から対策を講じることです。
「お金が足りないから修繕しない」という選択は、建物の劣化を加速させ、最終的には数倍の費用を招く非常に危険な選択です。
資金が限られている中でも、今できる最善の修繕を実施することが、長期的なコスト最小化につながります。
リフォームローンなどを利用することで、一時的なキャッシュアウトを抑えることが可能です。すぐに必要な工事に着手でき、返済を家賃収入から充当できるメリットもあります。
金融機関からの融資の場合、個人オーナー向けのアパートローン・リフォームローンと、管理組合向けの専用ローンでは、それぞれ特徴が異なります。
金利負担が発生するため、収支シミュレーションが必須です。また、融資審査に1~2ヵ月以上かかる場合もありますので、費用面はもちろんのことスケジュール調整においても十分な計画が欠かせません。
その他、物件の担保評価・収益状況が審査に影響したり、返済期間中は修繕積立の余力が下がるといった点にも注意が必要です。
■住宅金融支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」
マンションの共用部分のリフォーム工事を行う際に利用できる管理組合向けの公的融資です。固定金利で借入申込み時点で返済額が確定するため、計画的な返済が可能です。
■民間銀行のアパートローン・リフォームローン
銀行・信用金庫などの民間金融機関が提供するローンです。個人オーナー向けの賃貸物件修繕に活用できます。金利や限度額などは金融機関ごとで異なるため、複数の機関へ相談することがオススメです。
■信用金庫・地方銀行の地域密着型ローン
神奈川県内では横浜銀行や川崎信用金庫など不動産オーナー向けの修繕融資を扱っています。地域の事情を理解した担当者に相談できる点が強みです。金利や限度額などは各金融機関によって異なります。
■ノンバンク・専門の不動産金融
ノンバンクとは、預金業務を行わず貸出業務を専業とする金融機関を指します。審査は通りやすいですが、金利が高めの傾向にあります。緊急時の最終手段として検討するのがいいでしょう。
マンションの長寿命化や耐震補修、遮熱塗装・断熱改修などの省エネ改修に対して助成金が出る場合があります。うまく活用できれば修繕費用の一部を公的資金でカバーできます。
補助金・助成金は「着工前の申請」が条件のものがほとんどです。
工事を始めてから申請しても受け付けてもらえません。修繕計画の立案段階で自治体窓口への事前相談を必ず行ってください。
また、予算上限に達すると年度途中で締め切られることがあります。
■耐震診断・改修
耐震診断・補強工事を行う際に補助金を利用できます。特に旧耐震基準(1981年以前)の建物は適用されやすいです。
■省エネ・断熱改修
省エネ・断熱改修とは、玄関ドアの断熱改修や遮熱・断熱塗装、太陽光設置等を指します。年度ごとに内容が変わることもあるため、都度確認が必要です。
■長寿命化改修
高耐久性・高性能な材料を用いて次回までの修繕期間を延ばすことを目的とした工事が「長寿命化工事」とされます。国土交通省の「マンション長寿命化促進税制」を活用すると、修繕工事後の固定資産税が一定期間軽減されます。
■アスベスト除去
建材にアスベストが含まれている場合、撤去工事に対する費用を補助してもらえます。解体・改修前の事前調査でアスベスト含有が判明した場合、こちらの制度を確認してみましょう。
台風・突風・雹(ひょう)・積雪等の自然現象による建物の損傷は、加入している火災保険を利用して修理できる可能性があります。
火災保険の対象は自然災害による被害で、「経年劣化」が原因の破損等は対象外です。申請期間は災害発生から3年以内が基本ですので、被害を見つけた際は早めに手続きしましょう。
また、火災保険を悪用する業者も存在するため要注意です。「火災保険を使って修理できます」と言い、半ば強引に契約を交わそうとしたり、高額な違約金を請求してくる等のトラブルに発展します。
虚偽の申請は詐欺罪に該当する場合もあるため、施工業者の選定も慎重に行うことが大切です。
火災保険が適用される可能性の高いケースは、次のような例が挙げられます。
・台風や強風による屋根材、雨樋の破損
・飛来物による建材の損傷
・雹(ひょう)による建材の損傷
・積雪の重みによる屋根、カーポートの変形や破損
・突風によるフェンスや駐輪場屋根の損壊
分譲マンションの管理組合で、融資や補助金だけでは不足を補えない場合は、区分所有者への資金負担を求めることも必要になります。
この議論は最もデリケートですが、事前の丁寧な説明で合意形成は可能です。
各区分所有者から不足分を集める方法です。合意形成のハードルは高いですが、借入金利が発生しないので将来の返済負担が残らないメリットがあります。
ただ、高齢者や固定収入の方への配慮が必要です。金額と理由の丁寧な事前説明が合意のカギとなります。
積立金の増額も避けられません。長期修繕計画を現状の劣化・コストに合わせ見直し、段階的に増額していきます。一度に大幅増額は反発を招きますので、注意が必要です。
また、説明の際は「なぜ今の積立金では足りないか」をデータで示したり、国交省ガイドラインの目安額と比較すると説得力が増します。
ただ安い業者に頼むのではなく、建物にとって本当に必要な工事を、適正なコストで実施することが重要です。
すべての修繕を一度に実施しようとすると予算が膨らみます。緊急性と重要度で仕分けし、まずは「今やらなければならない工事」だけ優先させることで、一回あたりの支払い負担を大幅に軽減できます。
■最優先:安全・防水に直結する工事
安全・防水に関する部分の劣化を放置していると、人身事故・雨漏り・構造腐食につながります。先送りすると修繕費が数倍に膨らむため、最優先で工事を実施しましょう。
【必要な工事例】
・外壁タイルの浮きや剥落補修
・屋上やバルコニーの防水更新
・手すりや避難階段の錆補修、強度不良
・漏水が発生している箇所の補修
■次期:予防的・機能維持の工事
今すぐでなくても2~3年以内の近い将来必要になるものです。計画的に実施することで費用が最小化できます。
【必要な工事例】
・外壁塗装やシーリング打ち替え
・鉄部塗装
・給排水管の部分補修や点検
・共用廊下や床面の補修
■後期:美観・付加価値向上の工事
安全性・防水性には影響がなく、入居率向上のためのバリューアップ工事です。予算に余裕ができてから実施を検討しましょう。
【必要な工事例】
・エントランスの美装や照明刷新
・駐輪場の床面塗装やラック交換
・ゴミ置き場の改修や屋根設置
・外構や植栽の整備
同じ品質の工事でも、発注先によって費用が大きく変わります。
大手ゼネコンや管理会社に工事を丸投げした場合、20~30%程度の中間マージンが発生することがあります。
私たちのような自社施工の専門業者に直接依頼することで、同じ品質の工事でも適正価格で実施することが可能です。
業者を比較する場合は、3社程度から見積もりを取り、「なぜこの金額か」を説明できる業者を選ぶことが重要です。またその際、同一仕様書に基づく相見積もりをすることで比較がしやすくなります。
例えば、すべてをタイル張りを行うのではなく、一部を塗装に切り替えたり、耐用年数が15~20年程のフッ素塗料などを使い、塗り替え回数を減らすといった方法もあります。
一回の工事費用を安くするだけでなく、次回修繕までの期間を延ばすための材料・工法を選ぶことも対策のひとつです。
単発的なコストは高くなりますが、高耐久の高い材料などを使用してメンテナンスの頻度を抑えることで、長期的なトータルコストを削減することにつながります。
資金が足りないとわかったときに、どのような順番で動けばいいのかを確認してみましょう。
資金計画の第一歩として、まずは専門家による建物診断を受け、現在の劣化状況を正確に把握することが大切です。
「まだ数年持たせられる部位」と「今すぐ対処が必要な部位」を仕分けし、必要な工事の優先順位と概算費用を整理します。
自治体窓口・保険会社・住宅金融支援機構のホームページ等を見て、利用可能な補助金・助成金・保険給付を確認します。
着工前の申請が条件のものが多いため、この段階で手続き方法や必要書類を詳しくチェックしておくようにしましょう。
予算の上限を明示した上で、複数の施工会社に予算内でできる修繕プランを提案してもらいます。
この時、金額だけで選ぶのではなく、「なぜこの優先順位か」「最適な材料・工法は何か」をきちんと説明できる業者を選択することが重要です。
補助金・保険金を利用しても資金が不足している場合は、金融機関への融資相談を開始します。
融資審査には1~2ヵ月以上かかるケースも多いため、工事の着工予定日から逆算して早めに動く必要があります。
今回実施する工事・2~3年後に実施する工事・5年後以降に実施する工事を整理します。
次回修繕に向けた積立金の見直しもこのタイミングで行い、状況に応じて積立金増額や管理組合への説明も実施します。
資金が足りないから修繕しないという選択は、建物の寿命を縮め、最終的にはさらなる高額な出費を招きます。
予算が限られているからこそ、「調達」と「最適化」の両面から丁寧に対策を立て、限られた予算の中でも建物の安全性を確保し、資産価値を守ることが大切です。
補助金や火災保険、融資など資金を集める方法はいくつかありますので、まずは必要な工事や利用できる制度を整理し、修繕計画を見直すようにしましょう。
ビルドアートでは予算やご要望に応じたプランを提案しておりますので、気がかりな点がある場合もお気軽にご相談ください。大規模修繕を成功させるために徹底的にサポートさせていただきます。